エイトビートにのっかって

2022.12.25

好きなものや自分が刺さっている現在進行系のものを紹介しろという。
はて。最近買ったものか。紹介できないものしかない気がする。考えろ、考えろ。
もうすこしだけ、STAY TUNE。

前回これを書き上げて、このサイトに載せたのが4月の26日。この駄文を書いているのが12月25日。
まるまる8ヶ月をかけてしまった。鴨川には雪が積もり、解け、川になって、流れていきます。
そして雪解けでぐずついた川べりを走り(ランニングが趣味なおじさんになってしまっています)、
小気味よく息を切らせながら、冬の寒さを精一杯吸い込む。
つくしのこは恥ずかしいのかまだ顔を出さない。この文を練る。年をまたぐと、続きを思い出せないからだ。

思い出すことに努力を必要とするようになってしまって、ああ、おじさんになったのだなと思う。

8ヶ月前にAmazonから送られてきたドラムセットは電子ドラムで、
ROLANDのV-DrumsというシリーズのTD-KVX2というものだった。
楽器に限らず、あたらしく始める趣味は、継続のハードルを如何に下げるか、ゼロに近づけるかが肝だと思ってるので。

1.騒音を気にせず叩ける。
2.練習用の音源がすぐ用意できる。
この2つが揃うことが、ドラムにおいては特に重要だと考えた。

これを満たせないと、鴨川に運んで叩くとなると、
やれ雨だ、やれ寒いだ、暑いだ、カップルが多いからだ。
練習用の音源や楽譜を買いに行く、行っても売ってない。知らない曲しかない。
覚えるためにサブスクで聴く。
叩く前にやらないといけないことが増えてしまって結局めんどくさくなりそうなのだ。やめる理由はすぐ用意できてしまう。100個でも、200個でも、のぞむなら、何個だっていってやる。

スクールに通うことも考えたのだが、予約が必要である、ということと、
何から始めたらいいかわからない、わからないことがわからない、という状況の時は、
とにかく気が向いた時にすぐ音を鳴らせる環境のほうが重要だと考えたのだ。
あと、僕は人見知りなので、ドラムの講師と30分スタジオで二人きりになって何を話したらいいのかわからないのだ。
こんなのは言い訳をいっぱい用意してしまって、結局遠ざかるのは自明である。

ベッドルームに設置する。組み立てる。ハイハットを8回刻む。バスドラを踏み、交互にスネアを左手で叩く。
30分ほど、ヘッドホンから流れるクリック音に合わせて、エイトビートが完成する。
これは楽しい。
うおォン、俺はいま、人力TR-808なのだ。Androidであり、サイボーグであり、レプリカントなのだ。俺の四肢はリズムマシンと化した。

寝る前のルーチンワークが、30分のリズムマシン化となり、1ヶ月が過ぎた頃、世の流行歌に合わせて叩きたくなってきた。
セッションである。

YOUTUBEを検索する。あいみょんの曲も、米津玄師も、初心者向けにアレンジしてくれた練習音源がネットには溢れていた。
これは楽しい。楽しい、どんな曲もエイトビートに合わせてくれる。
この世のあまねくすべての曲が、俺のエイトビートに跪いて、合わせてくれる。これはビート界のバチェロレッテであり、シャッフルアイランドではないか。頼んでもないのに、水着の隙間のオイルを塗ってくれるし、年上女子が、今度の恋は年下かなと話しかけてくれるような歓喜と絢爛と、食傷。歓喜はドーハに行かずとも、京都市中京区にあったのだ。

ハネたファンクネスも、怒涛の2バス16ビートも、フロアを揺らすEDMも。すべてがエイトビートにアレンジされてしまうことに気づいた瞬間。向上心を失ってしまったのだ。エイトビート叩けたら、もういいやん。と。
仕方がない。カルディで買ったコーン茶と、30分並んで買ったLANDのスコーンを夜食にして、あたたかくして寝る。カフェインがない分。胃にも睡魔にもやさしい。
エイトビートの喧騒が続いたあとは、やさしい夜たちが、帰ってきたのであった。
今週までは、そんなことがあった。ネクストはお餅です。MOCHIです。正月だもの、いくつか寝ると。

PROFILE

山﨑 昌宣

株式会社シクロ代表取締役 / シクロホールディングス株式会社会長
Derailleur Brew Works代表

大阪府大阪市出身2008年大阪市内で介護医療サービスの会社「株式会社シクロ」を発足。2018年からは趣味が高じてクラフトビール「Derailleur Brew Works」の醸造を開始する。自転車競技の実業団にも所属するロードバイク好き。異業種の出会いこそが自らが強く&面白くなれる道と信じていて、人との繋がりを大事にしている。口癖はネクストとステイチューン。
HP : Derailleur Brew Works

RECENT ARCHIVE