【お悩み】近所のノラ猫が懐かない。今よりも距離を縮めるにはどうしたらいい?
2023.02.20
人生の悲喜こもごもが街の空気に溶け込む街、西成の一角に今宵も灯る小さなネオン……。
ここはドヤの止まり木「オアシスきみこ」。夜ごと、シクロスタッフが日々のモヤモヤを抱え、匿名でママ・きみこに会いにやってくるのです。
はてさて、今宵はどんな人がどんな悩みを抱えてやってくるのでしょうか?
萩ノ茶屋の母、きみこによる相談コーナーのはじまりはじまり。
こんばんは〜。ひとり入れますか?
こんばんは。お好きなところへどうぞ〜。
ありがとうございます。
水割りでいいかしら?
はい。ありがとうございます!あ、かわいい。コースターの絵が猫ちゃんだー!
かわいいでしょ?猫好きなのよ〜。と言いつつ、最近犬の魅力にも目覚めてたりするんだけどね。あなたは猫派?
はい!完全なる猫派です。ついつい街なかでも猫を探してしまうタイプで、猫に会えるか会えないかでその日の幸福度が変わりますね。
それはかなりの猫好きね!
へへっ、そうなんです。最近、家の近所にほぼ毎日出会うノラ猫ちゃんがいるんですけど、やっぱり会えると憂鬱な気分も吹っ飛ぶんですよね〜。
その気持ちはわかるわ。癒されるわよね。
写真もあるので見てください!あー、ほんとかわいい……。
あら、ほんとにかわいいわね。この「そう簡単には気を許しませんけど?」って目つきがまた、たまらないわね。
そうなんです……。この猫ちゃん、目つきだけじゃなくて、実際に全然懐かないんですよね……。
まあ、ノラ猫ちゃんだものねー。人に警戒するのはしょうがないんじゃない?
でもおやつは食べるんですよ。そろそろ触らせてくれてもいいのになあって……。
なるほど(笑)。私もそういう経験あるわよ。猫ではなく人間で(笑)。
え?人間で?(笑)。
まあ、私の話は置いといて。あなた、会うたびにおやつをあげてるのよね?
はい。もちろん!だって喜ばせたいじゃないですか。
やっぱりね!その猫ちゃん、もらうことがあたりまえになってるんじゃないかしら?
モラウコトガアタリマエ……?
そうよ。あなたがおやつをくれるのは、もうそのノラ猫ちゃんにとってはあたりまえのことなのよ。特別なことではないの。あなたはその猫ちゃんにとっては、すでにただの飯係!お友達として関われてないんじゃない?
め、飯係……。ああ、グサッときますね……。
そもそもおやつぐらいでは触らせないんじゃない?ノラ猫にだって、プライドもスタイルもあるだろうしね!
そうかもしれません。ノラ猫の気持ちに寄り添う心が足りてなかったんですかね。
うーん。寄り添うというか、見返りを求めているんじゃないかしら。「おやつをあげたから触らせてほしい」なんて、猫からしたら別におやつを頼んだ覚えはないわよね。あなたが好きでおやつをあげているだけなんだから。
うう、確かに見返りを求めていたかも……。え〜ん!だってどうしても触りたいんですもん!
あえて猫に合わせすぎずに、あなたも気まぐれに接してみるのはどう?ときどきは、素通りしたり、そのぶん会った時は目一杯甘やかしたりね。猫に愛されようとしすぎて、がっつき過ぎなのかもね。少し力を抜いて接したら、案外、触らしてくれるかもしれないわよ?
なんだか、他者への関わり方って猫も人間と同じなのかもって思えてきますね。
そうね(笑)。人間も、愛するがゆえに相手に尽くして、それで見返りを求めすぎて逃げられちゃうなんてこともよくあるものね。それに「見返りを欲しそうにしている」のって、なんだか見てわかるじゃない。物欲しそうな目でがっつかれると、やっぱり引いちゃうわよ。何事も自分が好きでやってることには、見返りを求めないことよ。
というか、餌で触らせるような猫は猫ではないわ。犬のような猫ね。
もっとわかりやすく懐いてほしいなら、犬触ってればいいんじゃない?
そ、そんな〜。
PROFILE
ママ・きみこ
ドヤの止まり木「オアシスきみこ」の名物ママ。
昼は西成のとある企業の経営戦略部、敏腕幹部の顔も持つとウワサされる謎めいた面も。
カラオケの十八番は竹内まりやの「不思議なピーチパイ」。
Text by コイケ マオ
Edit by ヒラヤマヤスコ
Illustration by トミタリサ