#01 知識や経験がなくてもDBWを推したい!謎の応援アカウントが教えてくれたクラフトビールの裾野の広がり

2023.07.04

シクロ代表取締役の山﨑と、いろいろな分野で活躍している山﨑が話してみたい人を呼んで対談するシリーズ。今回は「Instagramにうちのビールを推してくれてる謎のアカウントがあるんです」と山崎がかねてより気になっていたアカウントの持ち主がお相手。画面に映るのは、まだ商品化に至っていない「U宙麦酒」のプロジェクトをやたら応援する、謎の若い女性……。Derailleur Brew Worksのファンなのか?宇宙マニアなのか?あと、勝手にブランドのロゴ画像とか使ってるの、悪気はないだろうけど一言忠告しておきたい! そんなこんなでアカウントの主、サラさんをお呼び立てしました。若い人が素直に情報を吸収して、クラフトビールにハマっていく清々しい対談になりました。

PROFILE

サラ

和歌山県和歌山市出身。自身のビール研究と、同世代の若い人たちにビールの魅力を広めるべくInstagramで発信をおこなう大阪在住のエステティシャン。最近ビールのおいしさに目覚めたこと、また星空を眺めるのが好きなことからDerailleur Brew Worksの「U宙麦酒(うちゅうビール)」に辿り着き、非公式に応援をはじめる。対談をきっかけに、自分が飲んだビールの記録をはじめた。大型バイクの免許を保持しており、趣味はツーリング。マンガの『NARUTO』も好き。
Instagram : @uchu_beer

山﨑 昌宣

株式会社シクロ代表取締役 / シクロホールディングス株式会社会長
Derailleur Brew Works代表

大阪府大阪市出身2008年大阪市内で介護医療サービスの会社「株式会社シクロ」を発足。2018年からは趣味が高じてクラフトビール「Derailleur Brew Works」の醸造を開始する。自転車競技の実業団にも所属するロードバイク好き。異業種の出会いこそが自らが強く&面白くなれる道と信じていて、人との繋がりを大事にしている。口癖はネクストとステイチューン。
HP : Derailleur Brew Works

今回は異色の対談となりそうですね。

山﨑 そうですね。この連載は、僕が普段からお付き合いがあったり、顔見知りではあるけどじっくり話きいたことなかったなあって人をお呼びして、その人に応じていろんなテーマを立てて対談をするっていうものなんですよ。

サラ はい。

山﨑 ただ、今回はイレギュラーで、サラちゃんにはお会いしたことがなかったんですよね。完全にはじめましてなので、ちょっと緊張してるっていうか、すごく新鮮なドキドキがあります。

サラ 恐縮です……!対談のアポイントがあったとき、私もビックリしました。

山﨑 そうそう、どうしてサラちゃんと話してみたいとなったかというと、ぶっちゃけ「この謎のアカウントは誰なんや?」という疑問だったんですよ。

サラ (笑)。

山﨑 仕事柄、Derailleur Brew Worksの名前をSNSでサーチかけて、市場の動向を調べたりはしていて。そのなかで僕たちがいま進めているプロジェクトのひとつ「U宙麦酒(うちゅうビール)」をやたら推してくれているInstagramアカウントを見つけたんですよ。宇宙産業に関わる企業と一緒に、ISS(国際宇宙ステーション)で酵母を培養してビールをつくってみようっていう取り組みなんですけど、それを推すアカウントの主がサラちゃんだったという。

サラ そうですね。

山﨑 まず聞きたいのが、このアカウントを運営してサラちゃんに何かメリットってあるんですか? 責めているとかでは全然なくて、U宙麦酒ってまだ商品化はしていないし、Derailleur Brew Worksの銘柄って他にもいろいろあるなかでそれを推しているのは何なんだろうなって。

サラ えーっと。もともと私、宇宙っていうか、空が好きなんですよ。星を見るのも好きで。こないだも沖縄に旅行で行った時に望遠鏡で天体観測もして。で、星についてSNSでいろいろ調べてたらシクロさんのU宙麦酒が出てきたんです。

山﨑 じゃあ宇宙ビールをわざわざ調べたわけじゃないけど、宇宙やビールを調べているうちに組み合わさったやつが出てきて……ってこと? それで応援するアカウントをつくったってことなんですか?

サラ あと、理由がもうひとつあって。私ってもともとビール全く飲めなかったんですけど、とあることがキッカケでビールが飲めるようになったんですよ。しかもおいしいと思って。でも、なかなか同世代にはビールおいしいっていう子がいないので、ビールを飲みたいと思ってもらえるように、興味を引くものがあったらいいなって思ってはじめたところもあります。

山﨑 それが宇宙だったってことか。

宇宙もビールも著作権も詳しくないけど、発信したら繋がった

サラちゃんは宇宙やビールについて常に追いかけてきたんでしょうか。

サラ いや〜、正直どれもぜんぜん詳しくないです(苦笑)。

山﨑 え、そうなん?宇宙っていうか、星が好きなのか……。星っていうと、星の何が好きなんですか?星座とか、星の名前とか、いろいろあるじゃないですか。

サラ 特定の星が好きっていうよりも、なんていうか、星を眺めるのが好き……みたいな。

山﨑 ほう?

サラ 実家が和歌山県にあるんですけど、わりと田舎の方なので星がきれいなんですよ。夜道を歩きながらずっと星空を見上げてるのがめっちゃ好きで。小さい頃に星の本なんかも買ってもらったりはしたんですけど、夜空の、小さい光が密集してる感じが好きなんです。

山﨑 何かこう、自分の知らない世界みたいなのがあるのがいいってことですかね?沖縄で天体観測したんでしょ?「この星を見ましょう」みたいな感じで。

サラ 見せてくれました!でも、名前がカタカナやったんで全然わからなかったです。

山﨑 星の名前はだいたいカタカナでしょ(笑)

サラ ほんまに覚えられないんですよ〜!

山﨑 U宙麦酒を推してくれてるのはありがたいんやけど、他に宇宙でビールつくってるところって知ってますか?

サラ いくつかあるんですよね、確か。

山﨑 アメリカとかはけっこう盛んにやってるみたいですね。スペースシャトルに乗せてビールを貯蔵したり、原料を宇宙環境で寝かせたり。醸造したビールを国際宇宙ステーションで熟成させるっていうのもあって。

サラ そうなんですか!アメリカまではちょっとわかんないです。日本語の情報ばっかり見てました。

山﨑 いや、日本語でもアメリカでの宇宙ビール醸造の情報出てると思うよ。そうか、いろいろ情報を得たうえでU宙麦酒に引っかかったわけじゃないのか。

サラ あの、文章めっちゃ読んだんですけど。

山﨑 プロジェクト概要のプレスリリースかな。

サラ 多分そうです。私、文章が苦手すぎて。あんまりちゃんとわかってないと思います。

山﨑 あ、なるほど。じゃあU宙麦酒の話をするとですね。宇宙空間に酵母を持っていったらどうなるのか?っていう実験をまずして、その酵母が生きていたらビールをつくってみようかっていうプロジェクトですね。酵母が死んじゃってたらビールはつくれへんねんけど、宇宙空間で酵母はどんな育ち方をするのか、もしくは育たんのかっていう疑問を実際に宇宙に酵母を飛ばして確かめてみようと。打ち上げ自体が来年か再来年なので、全然先の話なんですけど。あ、酵母はわかります?

サラ えっと、ビールをつくるのに発酵させるやつ。

山﨑 そうそう、麦芽があって……。

サラ 麦芽ってなんですか?

山﨑 麦って、まあ米でもそうなんやけど、穀物を水につけておくと、出芽するんですよ。殻が破れて小さい芽が出た状態。穀物の粒のなかにはでんぷんがあって、芽はそれを糖分に変換して、それを栄養に大きくなろうとするんですよ。ビールは、その糖分を酵母が食べてアルコールに変換するのを利用するんです。

サラ うんうん。

山﨑 酵母は、いまは業務用に安定生産されてたりするけど、もともと空気中に漂ってる菌類なんよね。あ、パンを膨らますイースト菌も、その仲間。なんにせよ、宇宙で酵母を育てたことがないから、やってみましょうと。

サラ へええ……。すみません、U宙麦酒を応援するって言っときながら、宇宙のこともビールのことも全然よくわかってないんですよ。ただなんとなく「いいなあ」って、思いついたままにInstagramはじめたのはあるんですけど。

山﨑 逆に、知識とかもないけど、なんとなくで応援アカウントつくる勢いはすごいなあって思うけどね。ちなみに、ただ応援するだけじゃなくて、自分がインフルエンサーになりたいとか、企業と繋がりたいとか、あの応援アカウントをつくるにあたってそういう欲はなかったの?

サラ あ、それはちょっとありました。でも、ビールについて詳しいわけでもないし、私みたいになんでもない人間がいろいろ聞ける状態ではないなとは思っていたので、とりあえず発信はしてみようっていう……。はっきりした「成功」を持っていたわけではないので、自己満足の領域で。

山﨑 じゃあ、僕はサラちゃんのアプローチに、まんまと食いついてきた奴ってことか(笑)。

サラ まさか、社長から対談したいって言われるとは思わなかったです!

山﨑 でもさ、興味があるならDMとかしてくれたらいいんちゃうの?僕はサラちゃんのことがものすごく気になったから、わりと早く声をかけたけど、見つけてもらって声をかけてもらうのを待つのって、やり方として確率が高いわけじゃないじゃないですか。

サラ う〜ん、私的に、直接連絡するのはビビってたというか。

山﨑 そっかあ。そういうもんなのかもなあ。でもさ、ビビってる割にうちのロゴ画像とか勝手に使ってるし、文章も出典を明記せずにまるまるコピペしてたりさ、けっこう著作権的にアウトなことやってるから、そこは注意しとこうと思って。

サラ あ……そうですよね。すみません!

山﨑 応援してくれるのはめっちゃありがたい、ほんまにありがたいし、ビールを友達の世代に広めたいとか、あわよくば企業から声がかかったらいいなあって思うのは全然いいと思うんですよ。でも画像とか、企業の持ち物を使うなら許可取らなあかんし、話は聞きにいかなあかんよね。

サラ すみません、著作権のこととかも、ちゃんとわかってなくて。

山﨑 サラちゃんたちの世代って、SNSが当たり前にあるじゃないですか。そのなかで、いわゆる「拾い画」とか「拾い動画」が当たり前になっていて、著作権の意識が希薄になってるなって思うことがすごくあるんよね。勝手に誰かのものを使うことに躊躇がないというか。

サラ そっか、そうかもしれないです。

山﨑 僕はいまサラちゃんと喋って、悪気があるわけじゃないってわかったけど、問答無用で画像使用のための金銭を要求してきた、訴えられたりする可能性はなきにしもあらずやから、そこは気をつけて〜!

サラ はい……!ごめんなさい!

山﨑 まあでも、社長の僕がまんまと引っかかったわけやし、詳しくなくてもまず発信するっていう行動力は、素直にすごいなあって思います。知識がなくても、こうやってちゃんと繋がれたわけやしなあ。すごいなあ。


Interview & Text by ヒラヤマヤスコ
Photography by 福家信哉

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