#02 教えて先輩社長! 商社の目線で語る、ブランドが愛されるためのコンセプトと育て方

2022.10.04

PROFILE

降幡 昌弘 氏

アルコインターナショナル株式会社代表取締役CEO
大阪府箕面市出身。流通科学大経営学部卒業後、2年半の家電メーカー勤務を経て、家業である輸入会社・アルコインターナショナル株式会社を継ぐ。アメリカを中心としたアウトドアプロダクト、ファッション商材の輸入、卸をおこなうほか、「地球を、たのしくする。」をコンセプトにしたセレクトショップ「Fav_Our_Planet」も運営する。趣味はトレラン、ウインドサーフィン、スキーなど。
HP : アルコインターナショナル株式会社
HP : Fav_Our_Planet
Instagram : @alco_international

山﨑 昌宣

株式会社シクロ代表取締役 / シクロホールディングス株式会社会長
Derailleur Brew Works代表

大阪府大阪市出身。2008年大阪市内で介護医療サービスの会社「株式会社シクロ」を発足。2018年からは趣味が高じてクラフトビール「Derailleur Brew Works」の醸造を開始する。自転車競技の実業団にも所属するロードバイク好き。異業種の出会いこそが自らが強く&面白くなれる道と信じていて、人との繋がりを大事にしている。口癖はネクストとステイチューン。
HP : Derailleur Brew Works

いつかブランドは終わってしまうからこそ、急激な成長率はいらない

山﨑 ビール醸造や飲食店舗の世界観づくりって、もちろん僕も関わるし最終決定はしますけど、割と軸立てみたいなものは醸造家やアパレル出身の人なんかを会社に引っ張ってきておまかせしてるところはあるんですよ。アルコの場合、こういう商品を入れたい!とする時の最後の判断基準は降幡さんなんですか?

降幡 仕入れ担当はいるんで、現場との「これ扱いたい」って意見はもちろん聞きますよ。いったん平たく全員の意見を聞いて、反対意見なんかも拾って、最終的に僕が判断しますね。

山﨑 自分で「こうしよう」って決めたものの、後になって覆すことってあります?僕はめっちゃあるんですけど。

降幡 めっちゃありますよ。

山﨑 あ、あるんや。なんかホッとした。

降幡 社員は嫌がるんですけどね、でも結果次第で覆さないといけないこともあります。今の時代って秒単位・分単位で価値観が変わるじゃないですか。経営者である以上は半年先・10年先のことを考えないといけないけど、自分の感覚だけじゃ変動の時代は生きていけない。だから変えていくことも必要だし、やめることは絶対的な悪じゃないと思います。

山﨑 ああ、それはめちゃくちゃ大事だと思いますね。

降幡 それに、基本は僕たちは商社なんですよ。自分で商品はつくってないし、売れるものを世界から見つけてくればいいんです。売れなくなったら、その時にどういう手を打つのか考えればいい……。20年やってきて、ずっと扱い続けてるブランドはそう多くはないんです。

山﨑 降幡さんのなかでの失敗ってあるんですか?

降幡 ありますあります!ライフスタイルに合わなくなったとか、メーカーが撤退するとか、他の代理店に権利が取られるとか、めっちゃあります。ただ、いま扱ってるブランドは、販売を切られるなんてことはほぼないかな。代理店業として、ブランドにとって最善の露出の仕方をできるようになってきたからだと思います。「こうやるとうまくいくな」を積み重ねてきたから。

山﨑 商品によって売り方の詳細は違うと思いますけど、なにか共通してある「こうやるとうまくいくな」ってあります?

降幡 ブランドが終わらないように、長く継続して売るのがいちばんキモじゃないかなあ。ブランドって続いていくのが難しいんです。どんなブランドだっていつかは終わっちゃう可能性がある。売上だけ考えてたら、ブランドがどんどん消費されちゃって売れなくなっちゃうんですよね。

山﨑 「若い子みんな持ってる」ような一大ブームのブランドも、20年後なんぼ残ってんねんって話ですよね、確かに。

降幡 ブランドの価値を下げず露出させていくには、細く長くするしかない。前年度成長率 200%!とかの伸びは怖いですね。前年度比10%〜30%くらいでゆっくり上がっていくのが一番いいかなと思います。ちょっとずつ伸びていけば降り方もゆるやかなので。

自分で物をつくるか、他所に探しにいくか?商人とクリエイターの脳の違い

プライベートブランドはつくらないんでしょうか?

降幡 それね、めっちゃ言われるんですよ。でもつくらないです。いいものを選ぶ商人的な脳みそと、ブランドをつくる脳みそって真逆だと僕は思うんです。それに、ひとつのものに固執して突き詰めるなんてできないです。僕は飽き性なんで。飽き性やから、次のことを探さないといけない。

山﨑 僕も飽き性なんですよね。でも飽き性やから自分が欲しいものをいろいろつくってる感はある。結局大丈夫だったんですけど、以前、工場を1ヶ月ほど修理のために閉じないといけないかもって話が出てきて、他社の工場に「レシピ渡すからつくってほしい」ってOEMのオファーをかけたんですよ。けど、「こんなんよぉつくらん」って断られた。コンセプトを渡すから、醸造レシピはおまかせでできないかっていう相談をした時も、うちの醸造チームだとサラッとできることが「こんな複雑なんよぉつくらん」って断られることがあって。そういう時に、うちってプロダクト持っててよかったって思ったんですよ。見たことないのつくれるし、見たことがないものを他社に期待してたらアカンねんなあって思いました。

降幡 なるほど、そういう考え方もありますよね。これは僕の考えではあるんですけど、自分の想像の範囲でできるものは売れないんですよ。

山﨑 ほ〜〜〜〜!(感嘆)

降幡 だったら想像を超えるものを見つけた方が早いし、海外のプロダクトにはワクワクするものも多い。「ファンクションとして多少粗くても、新しくて魅力的なこの商品を日本の人にどう売っていこうか」みたいな、そういう考えを巡らすのが好きですね。 

教えて降幡社長!後輩社長がとにかくいっぱい聞きたい一問一答

山﨑社長が聞きたいこといっぱいあるので、ここからは一問一答にします。

山﨑 多分僕より忙しいじゃないですか。遊ぶ時間ってどうしてるんですか?

降幡 僕は仕事と遊びが融合してるんで、オンオフの切り替えは考えたことないですね。走ってる時に新しいことを思いついたりします。まあ、扱う商品自体が遊びとリンクしてるものですしね。

山﨑 時間のつくりかたってどうしてます?

降幡 僕のカレンダー、いっつも社員にフルオープンなんですよ。プライベートも一緒くたなんです。誰とどこに遊びに行くとかも筒抜け。仕事の打ち合わせは隙間に社員が予定を入れていきます。会社の業績も全部オープンです。社長席もないし、東京の事務所はフリーアドレスですね。

山﨑 ちなみにうちはあるんですが、社長が部屋に入ってきたらピリっとすることないですか? 

降幡 ないですね〜。僕が怒ってたらアレやけど、誰もそんな感じないんちゃうかな。

山﨑 フルオープンでいることって、けっこうしんどくないですか?

降幡 まあ、ガラス張りみたいな状態ですからね。しんどい時もありますよ。あとはサボってる奴もよく見えてしまうし。イラッとはするけど見ないようにしてます(笑)。

山﨑 偉いな〜!僕、すぐに指摘してしまうわ……(笑)。2代目であることへのプレッシャーとかはあります?

降幡 よく聞かれるんですけど、プレッシャーっていうか、役割は違うかなって思いますよね。2代目になって内容も良くして、うまくいったとは思ってるんですけど。でも僕が船をつくったわけではないって思ってます。1代目ってやることなすこと自分が生み出したものじゃないですか。でも2代目の僕は、目の前に船があって乗っただけって感じですね。ちょっとずつ改築して乗組員を増やしたりはしてるんですけど。

山﨑 2代目でやりにくいことってありますか?

降幡 ないです、全くない。2代目である僕の役割としては、会社を成長させること。そもそも役割が別なので、親父と一緒なのは嫌だ、別でやっていきたい、っていう感覚もないんです。親父も親父でフル任せだったし……。そもそも、親父が会社をやってなかったら、いまこんな仕事を自分がやることもなかったし、1社目がサラリーマンやってたのも含め、ひとつの道の延長線上にあるなって感じです。

山﨑 延長線上ってすごいな……。社長って社員とはまったく別の人種で、寂しいものだって思っているんですが、寂しく思ったりはしないんですか?

降幡 寂しいのはわかりますよ。社員がみんなで行く飲み会に誘われへんな〜ってこともあった(笑)。でも社長ってそういうもんやっていうのは、小学生の時から親父に教えてもらってたんです。企業ってのはどういうもんやとか、会社潰れたらどうなるとか。

山﨑 いやもう、今日はセンパイにいろんなこと聞かせてもらってるな〜!あとふたつお願いします。社長で大事なものってなんですか?

降幡 1番は「繊細さ」やと思います。細かなことに気づけるか。そこに気づかんかったら不満が噴出するし、会社の綻びに気づけない。あとは……うーん、人を大事にすることじゃないですかね。会社っていうのは社員でも社外でも人が全てじゃないですか。それを理解して誠実にやっていくことかなあって。

山﨑 パッと答えが出てくるのはいつも考えてるからやろうな……。「社長に必要なのは金集めや!」って思った僕とは大違いです(笑)。

降幡 いやいやお金集めも大事ですよ。でも、お金集めだって経理ちゃんとしてる社員がいるんで任せられるし。結局人との関係が大事かなって思います。

山﨑 最後にこれだけ!うちのビールを降幡さんが育てるとしたら、何をしますか?

降幡 そうですねえ……。Derailleur Brew Worksのビールっておもしろいと思うんですよ。ビジュアルづくりも味もエキセントリックで、人の目を引くビールだなって思います。僕たちは「地球を、たのしくする。」ってテーマを掲げてるので、僕たちが育てるとしたら、健康とか、環境とかを大事にしたビールを飲んでみたいなって思いますね。

山﨑 なるほど……。

降幡 それは原材料に健康的な要素が入っているのか、売上の一部が環境保全に役立てられるとか、ビール瓶のリユースサイクルがより環境に配慮されたものなのか、わからないですけど。飲んで楽しいおいしいだけじゃなく、そういう仕掛けがあるといいのかなって僕は思いますね。

山﨑 いっぱい質問してすみません。「ビールにあったら嬉しい価値」も新しいし、今日はもう徳の高い話をたくさん聞かせてもらってめっちゃ勉強になりました……。こんな「先輩質問です!」みたいな回、はじめてなんですよほんまに。ありがとうございました。

Special thanks to Fav_Our_Planet

Fav_Our_Planet

FAVORITE OUR PLANET=地球を、たのしくする をコンセプトにした、アルコインターナショナル株式会社が運営するショップ。世界中から集めたアースフレンドリーなブランドをセレクトしています。

営業時間
1F SHOP&GALLERY / 11:00-19:00
2F CONDITIONING GYM / 10:00-21:30
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Interview & Text by ヒラヤマヤスコ
Photography by 福家信哉

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