#02 トレランショップ×タップルーム「街をおもしろくするお店」同士が語る、それぞれのスタイル

2022.07.31

PROFILE

田所 伸太郎 氏

株式会社unite 代表取締役
大阪府箕面市出身。1977年生まれ。箕面駅前でトレイルランのショップ「unité」を経営する。生まれてから45年間、箕面から出たことがない生粋の「レペゼン箕面」。普通高校を留年のち中退し、単位制高校を20歳で卒業。25歳から16年勤務したアパレルメーカーで研鑽を積み、健康目的をきっかけにハマったトレイルランのお店を2020年オープン。趣味は料理、畑仕事、トレラン。
HP : unite(ユニテ)
Instagram : @unite_minoh

山﨑 昌宣

株式会社シクロ代表取締役 / シクロホールディングス株式会社会長
Derailleur Brew Works代表

大阪府大阪市出身2008年大阪市内で介護医療サービスの会社「株式会社シクロ」を発足。2018年からは趣味が高じてクラフトビール「Derailleur Brew Works」の醸造を開始する。自転車競技の実業団にも所属するロードバイク好き。異業種の出会いこそが自らが強く&面白くなれる道と信じていて、人との繋がりを大事にしている。口癖はネクストとステイチューン。
HP : Derailleur Brew Works

石橋が崩れた時考えるか、崩れないよう石橋を渡るのか

今までの会話だけでも、物事に対する捉え方が対照的なふたりだなあと思いますね。大らかな田所さんですが、不安やネガティブな気持ちになることはありますか?

山﨑 不安で眠れなくなる時とかあります?

田所 お店を開くにあたって500万の融資を受けた時は流石に眠れなくなりましたよ(笑)。でも、基本的にあかんかった時はその時考えようって思ってますね。コロナ禍でひょっとしたら店閉めなあかんかも?って可能性が出てきた時も、「そうなったらどっかで就職しよう」ってフワッと思ったくらいですね。

山﨑 僕からしたらそれがすごいんですよね。僕ね、あかんかった時のことめっちゃ考えてしまうんですよ。それって「if」でしかないんですけど、もしもの「あかんかった時」を考えて、その要素を先回りして潰しちゃう。リスクを潰しておけば、少なくとも失敗しないって考え方なんですよ。

田所 僕と山﨑さんだと事業規模も違うじゃないですか。同じ尺度では測れないと思いますよ。ただ、僕は「いつでもやり直せる」って経験があるので。

山﨑 というと?

田所 普通高校をドロップアウトした時、流石に「道外してもうたな」って思ったんです。でもその後、ハタチで高卒認定取って、20代後半くらいになってから、周囲に自分の生い立ちを話すと「偉いやん」って言われるようになったんですよ。僕は別に偉いとは思わないですけど、ただ、人から褒められるくらいにやり直しはいつでもきくんだなあって。「あかんかったらその時考えたらええかな」っていうのは、自分のそういった経験もあるからかもしれないです。

山﨑 そこからくるどっしりした余裕は、ほんまにすごいなあって思います。僕とは対照的。

田所 常々思ってたけど違いますよね。でも僕は、対照的やからこそ山﨑さんと喋るのがおもしろいんですよ。リスクヘッジへの意識も強いし、頭の回転が速いと思うんです。僕もそれに引っ張られて、頭がフル回転になるんです。で、解散したあとめっちゃ疲れる(笑)。

山﨑 それ社員にも言われるんですよ!「社長と話すの疲れる」って。めっちゃ失礼ちゃいます!?(笑)。

傍観者になる?中心人物になる?それぞれのお店のつくり方

山﨑さんや田所さんは、自分たちが箕面でお店を開くことで街にどういう影響を与えていきたいとか、どういう立ち位置でいたいと思っていますか?

山﨑 あ、それめっちゃ聞きたかったんです!まずは僕のエピソードをちょっと聞いてほしいんですけどね。

田所 ええ、ええ。

山﨑 僕は常々、既存のパイを奪い合うだけじゃなくて、新しい層にもアプローチしていかないと未来のクラフトビール業界は縮小する一方だと思っていて、味であったりデザインであったりを若い世代に手に取ってもらいやすいようにしているし、あとは積極的にイベント出店なんかもしてるんですけど。GWに、富士急ハイランドのフェスに出店したんですよ。その出店は完全に、新しい層を獲得するために行ったんです。そしたらね、GWですよ?書き入れ時の一週間出店して、売上が9万円とかだったんです。

田所 おお……!

山﨑 その一週間後、埼玉の新都心にある「けやきひろば」っていう商業施設で、全国的に有名なビアフェスが開催されたので、そこにも僕らは出店したんです。そしたら、4日間の出店で、一週間の富士急ハイランドの出店より売上の桁がふたつくらい違っていて。これはすごく難しいなと思ったんです。けやきひろばのビアフェスにやってくる人は、すでにクラフトビールが好きな人たちで、年齢的にも40代以上が多い。「もともとわかってる人」相手に商売すると売上は立つんですけど、残念ながら裾野を広げることにはならないわけじゃないですか。

田所 そうですね。

山﨑 そういうことを考えた時にね、僕らは「Derailleur Brew Works 山ノ麓 TAP ROOM」を箕面で運営しているわけですが、どこをターゲットにしてお店をやるのがええんかなあってすごく悩んじゃったんですよ。

田所 なるほど〜。そうか……。

山﨑 さらに僕は箕面の出身者じゃないアウェイなので。田所くんのような地元でやっている人のバックアップをするべきなのか、田所くんが見ていない方向を攻めに行くべきなのか。 そのへんってどうですか?

田所 それって、箕面の街のことや僕のことを考えてくれているからこその悩みですよね。それは本当に、手放しでありがたいなあって思います。感謝しているうえで、僕個人としては「こうであってほしい」っていう願望はじつはあまり持っていなくて。

山﨑 えっ、どういうことですか?

田所 僕は、お店をやっていることを大々的に宣伝しようとか、僕が箕面のトレラン界を広げていこうみたいな野望ってないんですよ。僕のことを理解している人に集まってもらって、その人たちが周囲の人にここを宣伝してくれて、その積み重ねでお客さんが増えていくものだと思っていてて。もちろん、未経験の人や若い世代にもトレランを好きになってほしいですけど、僕自身が旗を振るより、お客さんの繋がりのなかから、自然発生的に広がりを見せていけばいいかなって。

山﨑 そもそもそんなに若い世代をターゲットにしてないんですね。

田所 別に若い世代を排除したいとかでは全然ないんですよ。ただ、アパレルで働いていた経験上、個人でお店やると、顧客ってどうしてもオーナーの年齢に近い人が集まってきがちなんですよ。だから無理して若い人向けにはしてないです。というかそもそも、僕は「僕のお店やで!」と思ってお店づくりをあんまりしてないんですよね。

山﨑 というと?

田所 お店って、来てくれたお客さんがつくっていく要素が強いと僕は思っているんですよ。お客さんっていうか、サポーターかな。だから、お店に置いている商品は、僕が好きであるとか、いま流行りのブランドであるとか、機能性よりもおしゃれを重視しているとかではなく、道具として実直で便利なものをセレクトしています。そう、お店ってみんなのもんやと思っていて。持ちつ持たれつやから、田所の主張は少なくていいんです。

山﨑 えええ〜!すごい。僕は明確な意図がないと物事は動かないと思っているし、狙わないとターゲットにボール投げられないと思っている。

田所 山﨑さんのような人が狙ってボール投げてくれたらめっちゃ心強いですけどね。僕は常に物事の中心にいる必要ないってスタンスなので、僕が勝手に投げたボールに集まって来てくれた人が、新しく何かやってくれたら、どんどん巻き込まれようって思うんですよ。

山﨑 新しい人がなにか取り組みをするとして「もっとこうやったらいいのに〜!」っていう不満とかは出ないんですか?

田所 自分本位で僕やuniteを巻き込もうとしてる人が近づいて来る場合は、気持ち良く協力出来ない事があると思いますが(笑) それ以外は基本的に僕は、自然に繋がってそれが広がって行くのを傍観していられるタイプですね。

山﨑 うわあ、もうそれはすごいわ……。僕の悪い癖で「もっとこうやらな刺さらんでしょ」とかすぐ口出ししちゃうんですよ。

田所 (笑)。

山﨑 しかもそういう場合ってよく言い訳が発生するんですよ。とくに西成区は行政がらみも多いし、予算がシビアなことも多い。「予算がこれだけしかないので……」って言い訳されると、じゃあうちがウン百万円追加するから、もっとマスコミにプロモーションかけましょうよ!って手出ししちゃうんです。

田所 僕は予算が限られてるなら仕方ないし、予算の範囲内でおもしろそうなら乗っかるって感じですね。山﨑さんよりも経験が少ないので、「どうやってやってんねやろ〜」と、ちょっと覗きながら勉強させてもらおうって。

山﨑 うわ〜、僕はそれができない。自分の主張が入ってないと無個性のままで終わりそうで怖いんですよ。田所くん、すごいっすね。違いが明白すぎて「すごい」しか言えない(笑)。

西成の街を変えていくことにも繋がるからこそ、箕面の街をよりおもしろくしていきたい

キャラクターのタイプが違うからこそ、多様性をもって街に新しい要素を組み込めてもいけるのかなと思います。おふたりは、箕面の街がどうなったらいいと思いますか?

田所 僕は子どもが5人いるので、親目線としても「ここに住むのって楽しいな」と思えるような街であればいいなと思いますね。

山﨑 「ここに住むのって楽しいな」って、どういう指標だと思います?新店舗のオープン数が増えるとか?

田所 ああ、それは指標のひとつですよね。
僕や山﨑さんが店をやる事で、箕面って面白い場所やん!って認知が広がれば良いし、箕面でお店をやってみたい!って思える人が増えてくれたら良いと思います。

山﨑 大人がイキイキしながら街場での暮らしを楽しんでるって、それだけで魅力ですよね。プレイヤーがプレイヤーを呼ぶようになる循環は僕も理想的やなって思います。往年のアメ村なんかがまさにそうですよね。カルチャーや価値観に同調する人たちが次々お店を出して、あの雰囲気が醸成された。

田所 そうそう!箕面って街はそういうポテンシャルがある思ってて。 僕も駅前にお店を出してから初めて、近所のあのお店ええやん!って発見があったんです。
僕達がイベントを開催したり、SNSを通じて発信をして、箕面って良い街だなーって認識が広がれば、この街で商売がやりたいって人が出てくる。 個人事業主が集まって新しいお店が増え、街の密度が濃くなればより魅力的になると思ってて。
イオンモールに代表されるショッピングセンターはインフラ的な存在で便利だしなんでもあるけど、「ウキウキ」はしないなーって思うんですよ。 便利だから行くし需要もあるけど、そこには「街への愛着」って発生しにくいじゃないですか。

山﨑 確かにね。便利であることよりも、個人店のキャラが立っていて、お金落としたくなるエリアになっていくのが理想ですよね。箕面って観光都市としての要素もあるじゃないですか。地元の人から愛されるだけじゃなくて、定期的に箕面で遊びたくなる街にできたらいいな。向かうところは東京の高尾山じゃないんですかねえ。

田所 僕、高尾山行ったことないんですけど。やっぱ高尾山っていい感じですか。

山﨑 そうですね。トレランって関西だと40代からの趣味っていう傾向が強いですけど若い子もすごく多いんですよ。これは東西のカルチャーの違いもあると思うんですが。あと、運動後に立ち寄りたくなるカジュアルでおしゃれなお店も多かった。そうそう、リサーチを経てなんですが、僕はビールさえあれば箕面は化ける街やなと思ったんです。

田所 どういうことですか?

山﨑 冒頭でも話したんですが、ビールって、コミュニケーションツールじゃないですか。人と人を繋げるハードルが下がる。ちょっとお酒入っていい気分になって、友達つくったり、街にお金を落とすきっかけをつくってくれるなって。高尾山ほどの規模は難しいかもしれないけど、ビールを介して箕面の街に人やお金を循環させていける可能性は感じてます。

田所 そういう話を、こうやってできるのは嬉しいですね。箕面がもっと盛り上がったらええなって、お店やる前は夢物語だったんですけど。山﨑さんのように、自分の得意ごとで同調してくれる人が増えてきた今、だいぶ嬉しいです。

山﨑 ビールを通じて箕面にどんな影響を与えられるかっていう問いと挑戦は、西成でビールをつくることでどんな影響を西成に与えられるかっていうことにも繋がると思うんです。星野リゾートができたりして、イメージはどんどん変わっていきつつあるけど、やっぱり西成って特殊な街なんですよね。

田所 うんうん。

山﨑 そこで福祉の会社をやりつつ、ビールもつくっている僕たちが西成の街をどう変えていけるのかっていうのは継続的な課題です。ビールが街やそこにあるコミュニティをどう変えていくのか、箕面の街をひとつ変えることができたなら、僕らにとってもすごくいい財産になるなあって思いますね。

田所 自分ごと化して、積極的に旗振ってくれる山﨑さんだからこその課題への向き合い方ですねえ。

山﨑 いやもうしんどくなることも多いんですよ!「あかんかったらその時考える」「口出しせず傍観者でいる」っていう田所くんのスタンス、めっちゃ勉強になりました。

Derailleur Brew Works 山ノ麓TAP ROOMでカンパイ!

Interview & Text by ヒラヤマヤスコ
Photography by 福家信哉

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