加古川・高砂エリアの「まごころ」看板をどう守る?買収された事業所スタッフトーク

2023.12.25

2021年、加古川・高砂エリアの老舗介護事業所「まごころ」をシクロが買収しました。事業所が買収されたら仕事はどうなった?実際、どんなふうに仕事のやり方は変わった?「まごころ」で働くふたりが語る、買収された者たちによるぶっちゃけトークです。

PROFILE

中村 律子さん

大阪府羽曳野市出身。2005年にまごころに入社。子育てがひと段落したのをきっかけに福祉業界の道へ。相談支援専門員として事業所をまとめるほか、市民劇などにも積極的に参加し、外部との交流も盛ん。

楢﨑 政也さん

兵庫県高砂市出身。理学療法士。2021年にまごころに入社。現在は訪問業務に携わりながら新しい就労支援施設の立ち上げに関わる。趣味は散歩で、路地裏に並んだペットボトルなどの何気ない風景を撮るのにハマっている。

まごころ

兵庫県加古川市・高砂市を中心に平成3年から事業開始。医療福祉事業を展開している。令和6年1月より放課後等デイサービスを開設。誰もが安心して暮らせる地域の土台となるよう支援。 2021年にM&Aにより株式会社シクロのグループ会社となる。

まさか買収されるほど赤字だったなんて知らなかった

楢﨑さん 介護業界、買収されたりしたりってあんまり話聞かないですよね。僕が知ってるのはシクロ以外に1件だけなんです。

中村さん そうなんですね。

楢﨑さん 中村さんは、買収される前の状態ってご存じでした?

中村さん ずっと、前経営の頃から、10年くらいまごころで働いてましたけど、赤字って知らんかったんです。ぼちぼちいけてんのかな、くらいに思っていたので、もう驚きでした。
楢﨑さんなんて、入社されて間もない頃やったでしょ。

楢﨑さん そうなんですよ(笑)。入社してから「じつは経営陣が変わります」って言われて。びっくりしましたよね。しかも、赤字が原因で買収されたっていうじゃないですか。「やばいとこ来ちゃったな」「なんで言ってくれへんかったんや」って思いが正直ありましたね。 

中村さん そうですよねえ……。

楢﨑さん 中村さんをはじめ、まごころってキャリアが長い人が多いじゃないですか。みなさんの反応はどうでした?

中村さん 買収って聞かされても、まごころの施設名は継続するっていうし、楽観的には考えてたんですよね。「まあ大丈夫やろ」って。厳しい言い方をすると、何も考えられてなかったんやと思います。

楢﨑さん ただ介護業界って、現場で働くスタッフに経営に関わる数字があまり降りてこない現状がありますからね。

中村さん そうですね。あの、管理者が一応会議をしてたので、そこで契約している件数の報告とかはあったけど、 稼働率の話なんかは出てなかった。本来、自ら営業して契約を取ってこないとダメなのに、そういう仕事が必要だというイメージは持ってなかったかな。

楢﨑さん 福祉の仕事に対して、ビジネスとか数字というものと、あんまり結びつけずにやってきたっていうところが、まごころは大きかったんでしょうね。僕は前職の仕事で、理学療法士として毎日のようにまごころに営業に来てたんですが、他所からの目線で見ても、まごころはそういう毛色がかなり強かったなあと思います。

中村さん あ、そうなんですね。

楢﨑さん まごころって、この地域で一番の老舗なんですよね。この土地でずっと介護や福祉のサービスを立ち上げて、ヘルパーを育てる事業なんかも長年やってきた。それで、なんというか……社会的に価値のあるサービスをしてるから、数字のことはあまり見ないようにしていたというか。

中村さん あー……。

楢﨑さん ここがなくなると地域のみなさんが困るし、やさしさとまごころでやってきたというか。それはとても大事なことなんですけど、数字をシビアに見ないと事業それ自体が継続できへんわけで。

中村さん その通りですね。人件費も光熱費も、それこそガーゼ1枚取っても、単価ってどんどん上がってきてますしね。

買収されて変わった仕事への向き合い方


楢﨑さん シクロのグループに入ってから、仕事の仕方がガラッと変わりましたよね。

中村さん とはいえ最初の1年弱くらいは、旧体制をけっこう踏襲してたんですよね。たぶん、山﨑社長はスタッフたちの意識や仕事の仕方が変わるのかどうか、待ってくれてたんやと思うんですよ。でも結局、自分たちでは変えられなくて。ひとつの部署が閉鎖になるってことになりましたし。

楢﨑さん うんうん。

中村さん そこからはもう、大幅なテコ入れですよね。まずはカンファレンスのやり方について「時間をダラダラ使いすぎ」って全否定でお叱りを受けた。本来、カンファレンスっていうのはトップダウンで、まずは管理者が聞いてきたことを現場に落とさないといけない。でもトップダウンの流れがうちは一切できていなかったんです。

楢﨑さん 旧体制はそうだったんですね。

中村さん 毎週2時間ぐらい会議室に集まって、そこまで意見が出る訳じゃなく、管理者が話し続ける以前の方法は無駄が多かったと思います。そこからSlackを導入して、チャットツール上で意見をどんどん提案していきましょうって方法に変えた。方法を変えてはじめて、改善点がたくさんあったっていうのを知れたんですよね。

楢﨑さん 連絡ツールの変更だけでは業績改善には直接繋がらないと思うんですけど、中村さんが仕事で変えたことってなんでしたか?

中村さん まごころのケアマネージャーは、抱えている件数が約45件とかなり多いんですよ。無駄なところの見直しはもちろん、いままでできていなかったヘルパーステーションとナースステーションの連携の強化を意識しましたね。たとえば理学療法士やったら、内部にもいるのに、当時はよその事業所だった楢﨑さんに頼みっぱなしだったじゃないですか。

楢﨑さん ええ、ええ。

中村さん もうそれが当たり前になってたけど、うちのナースさんの良さを再確認しながら、 どうやったら依頼が回しやすくなるかっていう話を相互にしましたね。社内のリソースで仕事を回していくことも、売り上げに繋がっていくところですし。

楢﨑さん そうですね、僕も入社してから感じたのが、各部署の行き来がないってことだったんですよね。なのでまずは他部署のところに頻繁に話に行って、事務所にいろんな人が入ってきやすい状態をつくるところからはじめました。社内のリソースの循環率を調べて、それを訪問看護ステーションで共有して、循環率を上げるための施策を練ったり。

中村さん そうなんですね。

楢﨑さん 山﨑社長からある日、ガツンと現状の危うさを言われたんですよ。「今のままの働き方だとお給料払えません」って。営業に行って依頼を受けるわけですけど、その件数や売上が当時は見えにくい枠組みだった。もちろん自分は仕事をしているんですけど、自分の動きが明らかにできない現状に対して僕も思うところがあったので、指摘されたのはすごく嬉しかった。自分で変えていっていいんやなって思えたので。

中村さん 入社してすぐに大幅な変更を求められて大変やったんちゃうかと思うんですけど、嬉しかったんですね。

楢﨑さん そうなんです。毎月の成果をみんな教えなさい、本当は給料払われへんって言われるのはしんどいことですけど、逆にめちゃくちゃ嬉しくて。 以前は不透明なことも多かった、自分がきちんと仕事で結果を残しているっていうことを明らかにできるので。 これが全員に広がっていくと、みんな仕事がちゃんとできるようになるじゃないですか。

中村さん なるほど。いままで社内循環率なんか考えてもなかったんで、各個人ごとに循環率を出してもらったら、個人によって差がすごかったんですよね。ということは利用者さんがナースを必要としてないってことではなく、個人の意識の問題で社内のナースに繋がっていなかった。みんなでそのへんを話し合いましたね。

楢﨑さん 僕はやる気が出ましたけど、まごころで昔から働かれてたみなさんは、いきなりシビアに数字を見ないとあかんってなって、戸惑ったりはされませんでしたか?

中村さん やっぱり数字だけを言うと、あまりよく思わない人は正直いましたよ。

楢﨑さん あー、ですよね。

中村さん でも、なんで数字を伸ばさなあかんのか、45件の契約を受けることはどういうことに繋がるんかという説明をしっかりするように意識してましたね。赤字であることもみんなに共有して。このまま赤字のままやと、きっと生き残れない。しっかり数字取っていって回していかんと、いまの従業員数を抱えることができなくなるし、地域の人にも影響が出る。なんなら最悪、私たちの職場がなくなる可能性についても話をしました。

楢﨑さん そこで皆さんの意識も変わってきたんですね。

中村さん で、より一層、円滑に仕事をして結果を取っていくためには、まごころは訪問看護と訪問介護があって、社内のみんなで繋がっていけるんやから、 みんなで協力して仕事を回していかんとねって。深く考えずにやっていた仕事にどんな意味があるのか、なにを結果として残さないといけないのか。新しい連絡ツールに慣れるところからザワつくこともありましたけど、ようやく定着してきたかなと思いますね。

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