Loading...

うみねこ

左手はそえるだけ…

ヤマザキアキノリ

長距離の移動を伴う出張は、大好物である。
具体的には、東京の出張は買ってでもしたい。苦労よりしたい。
グリーン車は、積ん読系の本を消化する貴重な時間だからだ。
ああ、今日も内覧は渋谷で5時。今日も渋谷で5時。
わずかな期待(いい物件だったらいいな)と不安(でも家賃高いよね)を入り混じらせて、品川へ向かう。

鈴木雅之って老けないなあ。ああ石田ゆり子とサボタージュしたい。世界三大ゆり子。。。

相棒は『スラムダンク』、大好物である。
ええ、我がセックスシンボル椎名林檎。大好物である林檎嬢とお付き合いされていたと目されている、井上雄彦の金字塔である。僕は『リアル』のほうが好きなのだが。スコーピオン大好き。シャー。

違う違うそうじゃない。

僕の世代は、小学校でキャプテン翼がサッカー部員を爆増させ、中学校でバスケ部員を爆増させてきた。
僕は野球だった。大好物である。そろばん塾に通っていたのだが、月謝をくすねて貯めた汚いお金で、MSX2というパソコンのゲームを買うまでは、そろばん塾の中にある漫画を読んで、教養を身につけていた。あだち充先生のマスターピース、『タッチ』である。双子に憧れだしたのは、どうもこの頃の原風景が影響している気がする。宗兄弟、マナカナ、蛯原友里、
おすぎとピーコ。
僕は双子の兄か弟が欲しかった。できればできのいい弟でありたかった。僕は長男なので、すべて手に入らなかった。

違う違うそうじゃない。

井上雄彦は、僕から椎名林檎を奪い、電子書籍で読むという快楽を奪い(浦沢直樹先生と井上雄彦は、電子書籍解禁してほしい)、仕方が無いので、スキャナでPDF化する。

僕は三井派である。ゴリや流川のように、脇目も振らず一心に物事にがんばれた試しがないのだ。
強靭な心も、強い意志も。支える深い愛も。あいにくどれも持ち合わせておらず。
ふらふらと浮気をし、ちょっと嫌なことがあればすぐよそ見をし。不貞腐れて一旦捨ててしまう。
バスケを諦めたくせに、諦めきれず2年を棒に振って。
そしてそれをいつまでも引きずって、自分を傷つけて。
だから自分の評価はいつも低くて。
周りだけが、彼を天才と呼ぶ。彼だけが、自分の失われた2年を。失った自分を、呪い、卑下する。
コートの上で、救われる時は来るのだけれど。

違う違うそうじゃない。

一心不乱に、迷いなく頑張れる人は幸運なだけなのでは。
そう思う。それは運がよかったのだ。と。
落とし穴は世の中にいくつもあって、ちょっとした隙間にふっと入り込んで、支配をしてしまう。誰にだってあることなのに。

大事なのは、また、戻ってくる勇気と、それを認めてくれる周囲。認めてあげようと思わせる人格。人当たり。性格。
それがあれば、何度だって、やり直せる。そう信じたい時に。
スラムダンクは、三井は、みっちゃんは。僕に自信を持たせてくれる。
スリーポイントをいつまでもいつまでも、外さず入れ続ける。

山王戦でワンワン泣いていると、新幹線は新横浜を過ぎていた。

打てと期待されている時に、スーッとシュートを決めてやる。
僕らが何を期待されているか、わかっているのかわかっていないのか、それすらわからなくなるときはあるのだけれど。
でも、点差があればあるほど。残り時間はわずかでも。
いくつだってシュートを決めてやる。詰めてやる。そしていつか逆転してやる。

勝って勝って、まだまだ周りに喜んでいてほしいんだ。欲深い男でいたいのだ。
まだ、引退はさせない。

渋谷の物件は、いい感じだった。立地。大きさ、価格。まさしく大好物である。
まだ僕らのビールを知らない人たちに、一期一会で会える。ふさわしい場所。はじめまして、東京。そう挨拶できる、ふさわしい場所に思えた。

左手はそえるだけ。
そうつぶやいていたら、まさかのパスが僕のところに。そんな気分だった。

ブザーはまだ、鳴らないようだし、鳴らせない。シュートを打ち続けるし、決めてやる。

福岡の新店舗に続いて、東京もいい感じでキメちゃいそうです。ご期待ください。