もしも猫を飼うことがあるならば、Davidと名付けよう。
幼心にそう思ったのはあの三姉妹に出会えたからだった。
番組の中の猫の名前は、サチコだったり、カズちゃんだったり、
はたまた、ナガヤマだったり、ヨシダだったりしたのだけど。
ちょっと背伸びをしていたヤマザキ少年は、矢野顕子の曲名から拝借をしたかったのだ。
オープニングは、彼女のやわらかい声から。
畏怖される音楽性をひた隠しにする、柔和な猫の皮のような、
そんなやわらかい声のDavid。
桜沢エリカのイラストが、あの時代の最先端の空気をしっかり吸って、
まるで大学生になったばかりの従兄弟が、意地悪でタバコの煙を吹きかけるように、
僕にふーと吹きかけるのだ。
風間三姉妹も、来生三姉妹も、ブログ一本はゆうにかけるほど好きなのだけど。
でも、恩田三姉妹と彼女らを支えた、三谷幸喜には勝てないのだ。
やっぱり、僕は猫が好きだったのだ。
あれから数十年たって、僕はシャルトリューという猫を飼うのだけれど、デイビッドでも、Davidでもなく、
メルという名前を、彼女には授けてしまうのは、ごあいきょうではある。
やんちゃな、ねこなのだ。40過ぎの男やもめの前にあらわれた、奔放な美少女のねこなので。
デイビッド、ではなかったのだ。
ナガヤマでも、ヨシダでもなく。ナガヤマは心配されるような猫だったし。
だから、ブラジルの言葉で、蜂蜜を意味する、メルと名付けた。
僕の好きな国のフランスでは、海を意味するメル。
自由で、甘い存在でいてほしいし、いわれなくても、そうなので。
いい名前だと、思っている。

北浜と梅田、グランフロントに、BAKというブルワリーがある。
彼らとコラボレーションで、ちょっとおもしろいビールをつくってみた。
いや、作ってもらった、という表現がいいのか。アイデアは、
BAKの才能あふれるオーナーと呑んでる時に、ブレストの要領で、
浮かんでは消えた、泡のようなものだった。
ちょっとエロティックな、くすぐったくなるような、そんな素材を使って。
秋の終わりの夜風のような。
メルの、少しざらついた舌で頬を舐められて目が覚めてしまった、朝のような。
そんなくすぐったいビールを、Hazeに作ってしまった。
やんちゃな、にひきの、こねこたちをめぐるぼうけん。
もうすぐ、梅田と、心斎橋で。味わってみてもらえませんか。
混沌と、見通しの立たない未来を表しているような濁りを。
飲み干して、しまって。
夜風が吹けば、朝がきっと来る。
ざらついた舌にかすかなくすぐったさをおぼえたころに、朝がきっと来る。
もうすぐ、きっと、この街にも。
朝が来る。きっと、もうすぐ。
『リウー』は、きっとやってくる。待ちながら。
朝が来るのを、待ちながら。